今月の法話

[0034] 人と共に養う (2018/03/31)


先日一月十七日で六四三四人がお亡くなりになった阪神淡路大震災の発生から二十三年を迎えました。犠牲者を悼むつどいが行われたことや、大切なご家族を亡くされた方の体験などが新聞各社で紹介されておりました。涙なしでは読めないこれらの記事は、私たちに命の尊さを考えさせ、余りにも残酷な無常の現実を突きつけます。

その中に、十一歳の娘さんを亡くされたお母さんの記事が載っていました。

このお母さんは、「生きたくても生きられなかった命があることを、若い世代に伝えるために、語り部として活動されています。しかし、震災の経験を話すたびに、当時の出来事がまるで目の前で今起こっているかのような感覚に襲われ、悲しみや悔しさが押し寄せてきて、話し終えると数日は落ち込まれるそうです。

そんな辛い思いをしながらも語り続けるのは、「あの震災が、若い人たちにとって、単なる歴史の一コマになってしまうような危機感があるからだそうです。 このお母さんの苦しみと努力は、私たちに亡くなった命との向き合い方を教えてくれます。亡くなった方の命を本当に亡くさない、辛くても苦しくても、今生きている人たちのために、亡くなった娘さんの命が生かされているなと感じました。

供養という字は、人と共に養うと書きますが、このお母さんの行いは、正に人と共に養う何よりもの供養になっているように感じました。

禅昌泰賢


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